アナリーゼ

「アナリーゼ」という言葉はご存じの方も多いと思いますが、音楽用語で日本語では「楽曲分析」と言います。音楽の構成要素の分析を行い、作曲者の意図や意味を把握し、より深く音楽を理解することで音楽家あるいは一観客として、より豊かに音楽を楽しむことが可能となるといいます。残念ながら私は楽譜を見てアナリーゼするなど、とても縁遠いのですが、建築の設計図書、あるいは間取り図を読み解く力は長年の経験により、ある程度培われてきたようです。
建築アナリーゼ

現代建築であれば建築の設計コンセプトは明確ではあるが、今はなき茶匠の茶室を解釈するには音楽のアナリーゼの如く茶室の平面構成や天井の形、窓や出入り口の種類あるいは詳細な寸法が持つ意味、使用する材料を選んだ理由など、主なる設計図に加え写真、その他多くの資料から茶室の分析を行い、表面的な理解ではなく、より深く精神性までも理解し、その本質に迫りたい。
茶匠は優れた建築家であった。四畳半、約8㎡にも満たない小さな空間に独自の茶風あるいは思想を創造し表現してきた空間でもある。茶匠たちの茶室と茶庭を含める茶空間の構築には日本建築の伝統が継承され、さらには洗練に大きく貢献した事実を考える時、茶匠たちの残した財産である茶室をアナリーゼ(分析)することで深く理解できれば、より豊か建築を楽しむことが可能となり自身が住宅を含む建築を考えるとき、その分析が非常に役立つに違いない。
例えば織田遊楽の如庵。床脇に設けられた斜めの壁は一般的に客座を広く見せ、茶道口に給仕口の機能をもたせ給仕には動きやすい動線を確保させていると表現される。しかし実際には、ここに斜めの壁を設けなくとも床の壁だけでも機能性は損なわない。では何故、有楽斎はここに壁を設けたのであろうか。また、風炉先には火燈にくり抜いた一枚板を入れ、その先にある半畳の空間を設けた理由は、ただ空間に余裕をもたせ広く見せるためだけだったのであろうか。
また、表千家の利休祖堂には西向きに利休像が祀られる点雪堂に加え、席内の壁全てを反古張として西側に貴人口を開け西向き点前する反古張席が設けらた理由とは。
これらには必ず理由があり茶匠の意図が込められているはずである。ただ現存する意匠だけに目を向けるのではなく、その奥に本来の意思、思想、哲学の分析を行うことを建築アナリーゼとして考えたい。
もちろん、これらは私の個人的な見解であり異なる考え方があるに違いなく、個々の意見をお聞かせいただければ幸甚である。
